被害者の会 2
三回目になると、セディはもう迷わなかった。
扉を開けると、誰かが軽く手を挙げる。
「どうも」
「どうも」
それだけで通じるのが、この会のいいところだ。
椅子に腰を下ろすと、向かいの女が言った。
「最近どう?」
「……思い出す頻度は減った」
「進歩ね」
誰かが頷き、誰かが紅茶を差し出す。
甘すぎない。ここではそれが重要だった。
「まだ怒ってる?」
「怒ってるというか……呆れてる」
「それも進歩」
セディは少し考えてから言う。
「優しかったのが、逆に困るのよね」
全員が、ああ、と小さく声を揃えた。
「最低って言い切れない」
「だから長引く」
「わかる」
沈黙が落ちる。
嫌な沈黙じゃない。確認するための間だった。
壁の紙が一枚、増えている。
――思い出してもいい。でも戻らない。
誰もそれを声に出して読まなかった。
もう覚えているからだ。
閉会の際に、誰かがぽつりと言う。
「でもさ」
一瞬、全員が構えた。
「……今は、ここがあるから助かってる」
誰も否定しなかった。
セディは外に出て、夜の空気を吸う。
まだ完全には終わっていない。
それでも、独りじゃない。
それで、今日は十分だった。
2026年1月24日