四神の御手にて作られし魂が、その御座に還ることを心より願う
――――アスレイド・シェルジュ・アルヴァリオ

尾羽

「鳥の尾みたいだね」

ある日、アスレイドが言った言葉だ。白と黒が混ざった髪を、ノインは後髪だけ伸ばし続けていた。特に理由はなかった。ただ、背中に近い辺りが上手く自分で切れなくて。結局、肩甲骨の間の部分だけ伸びっぱなしだった。

からかってるようにも聞こえた言葉に、ノインは眉をひそめる。
理由を問われる前に、アスレイドが続けた。

「鳥は自由だ。どこへでも飛んでいける。風に逆らっても、流されても、それは全部、選んだ飛び方だ」

窓の外を見ながら言う声は、穏やかで、優しかった。
いつものように、相手を縛らない言葉だった。

ノインはしばらく黙っていた。
指先で、自分の後ろ髪をつまむ。
白と黒の境目が、はっきりわかる。

「……鳥だって、帰るところはある」

ぽつりと返すと、アスレイドは一瞬だけ目を瞬かせ、すぐに微笑んだ。

「そうだね。でも、帰らなくてもいい鳥もいる」

その言葉は、軽かった。
自由を祝福する言葉だった。
行かなくていい、縛られなくていい、戻らなくていいという祈り。
それでも、どこか突き放すかのような。そんな響きがある。

その理由は分からない。ただ、痛かった。

「……帰るかどうかは、俺が決める」

少しだけ硬い声で言う。
アスレイドは否定しなかった。ただ、静かにうんと頷いただけだった。

ノインは鏡の前で、自分の後ろ髪を確かめる。
鳥の尾のようだと言われた、その形。あの言葉を向けられてから、その部分だけは伸ばし続けていた。

自由だと言われた意味を、まだ分からないまま。

2026年1月8日