四神の御手にて作られし魂が、その御座に還ることを心より願う
――――アスレイド・シェルジュ・アルヴァリオ

地獄へようこそ

「……女、抱いたことあんのか」
不意にそう訊かれて、アスレイドは目を細める。
「……どうして?」
「気になった。そんだけ」
ノインの声は平坦だった。
だけどその指先は、どこか落ち着きなく、衣の端をいじっている。
アスレイドは少し黙ってから、静かに口を開く。
「うん。あるよ。……たくさん」
ノインの喉が、わずかに鳴る。
「この前の……あの娼婦だけじゃ、ねえんだな」
「そう。彼女だけじゃない」
「……どんな、抱き方してたんだ」
アスレイドは、その問いの意図を測りかねる。
けれど、ノインの声が微かに震えているのに気づいて、あえて淡々と答え始めた。
「彼女は、座らせるとすぐに太腿を開いてくれたよ。僕の膝にまたがって、腰を使うのが上手だった。
 ……喘ぎ声は、喉で転がすように鳴らすんだ。耳に残る、きれいな声だったよ」
ノインの口角が引きつる。
「……あんた、女の喘ぎ方まで、覚えてんのか」
「覚えてるよ。だって、僕がさせた声だったから」
沈黙。
ノインはもう、指先で布をいじるのをやめていた。
拳を握って、膝の上に置いたまま、じっとアスレイドを見ている。
「……他の女は」
「後ろから抱くときもあったし、脚を絡めてくる子もいたよ。僕の名前を呼びながら終わる子もいた。腰を打ちつけるたびに、何度も、もっとって言われたこともある」
そのときの声まで、アスレイドは今でも思い出せる。
でも、そのどれもが──ノインの声より、記憶に残っていなかった。
「……ノイン君?」
「……何でもねえよ。俺なんかより……気持ちよかったんだろ」
「それは違うよ」
「何が違うってんだ。俺は、ただ突っ込んでるだけじゃねえか。あんたみたいに、喘ぎ声まで操れねえ。
あんたみたいに、抱いて喜ばれるなんてできてねえよ」
ノインの声は、苦しげにかすれていた。
それでもなお、アスレイドはただ微笑んでいる。
「──でも、君の声だけが、僕を祈りたくさせたよ」
その意味がわからなかった。
ノインには、届かなかった。

だからこそ、地獄。

2025年9月18日