四神の御手にて作られし魂が、その御座に還ることを心より願う
――――アスレイド・シェルジュ・アルヴァリオ

名(祈)

名を問われたとき、沈黙があった。
それは迷いではなく、祈りが形を取るまでの時間だった。

「アスレイド」

口にした瞬間、空気が変わった。
誰かが異を唱えるより先に、祈りが通った。

それで十分だった。

奉神官は何も問わず、書記は名を記した。
中枢に刻まれる名は、正しいかどうかではない。
通るかどうかだ。

幼い頃、家の奥で読んだ古い伝記。
内容は忘れている。
断片的に覚えていた祈りを組み合わせただけだ。
意味も、由来も知らない。
それでも、その音は届く気がしていた。

名は与えられなかった。
選ばされたわけでもない。
自ら差し出した。

その名で呼ばれ、その名で祈り、その名で記録されていく。
別の名が失われたことを、惜しいとは思わなかった。

ただ、この名を名乗った以上、人に戻る祈りは通らないと知った。

それでも祈りは応えられる。

だから今日も、その名で立っている。

2026年1月10日