四神の御手にて作られし魂が、その御座に還ることを心より願う
――――アスレイド・シェルジュ・アルヴァリオ

南の夜、待つ者

灯りは、まだ油を食っている。
寝台の脇に置いた灯台皿の炎が、壁を揺らしては戻す。
さっきまでの女の嬌声も、体温も、もう残っていない。
肌に触れられた唇の場所だけが、かすかに冷えている。
この地の甘い香の残滓が、服の襟にこびりついて離れない。

片肘をつきながら、耳だけは外に向けている。
遠くの楽器、誰かの笑い声、足音。
混じるざわめきの中に、あの歩調を探してしまう。

ひとつ、ふたつ──似た音が通り過ぎるたび、背筋の筋肉がわずかに緩む。
もし、来なかったら。
もし、別の足音に絡め取られていたら。
想像はすぐに浮かび、すぐに切り捨てられる。
自分の中で育てれば、余計に痛むことを知っているから。

杯を手に取ろうとして、やめる。そんなことの、繰り返し。
沈黙は長く伸び、炎が一度だけ、爆ぜた。

──軋む音。背筋を、伸ばす。何事も、なかったかのように。
扉が開く瞬間、想像していた未来は一気に崩れ、
そこに立つ影だけが、部屋を満たした。

2025年8月11日