四神の御手にて作られし魂が、その御座に還ることを心より願う
――――アスレイド・シェルジュ・アルヴァリオ

レヴィンの独白

ノインを見ていると、どうしても弟の顔がちらつく。
あいつの、あの真っすぐな目。黙っていても伝わる頑なさ。剣を握る姿勢まで、妙に重なる。
……忘れるはずだったのにな。

俺があの日、自分の手で祓ったんだ。俺がやるしかなかったんだ。
そう言い聞かせて、黒くなった姿に刃を振り下ろした。
弟の声が消える瞬間を、この耳で確かに聞いた。
秩序の神に背かねえように、祓いを成し遂げた。
それで全部終わったはずだったんだ。

ノインの腰にあの短剣を見たとき、膝が震えた。
俺が捨てたはずの武具を、まるで当然のように握り、振るっている。
俺が祓ったはずの弟の残滓を、この男は平然と抱えて歩いている。
あの日の血の匂いが、また蘇る。

怖いんだ。
祓ったはずの影が、目の前に立っているみたいで。
再びあの時と同じように刃を振り下ろせと言われたら、俺にできるのかわからねえ。
一瞬でもためらうとしたら──それは全部、このノインが弟に似すぎているせいだ。

けどな。
正直に言えば、似てるからこそ、目を逸らせない。
俺が失ったものが、そこにもう一度立ち上がっているように見えてしまう。
救いでもなければ、赦しでもない。ただの混同だと分かってる。
それでも、あいつの背中を追ってしまう。
失った弟の続きを、この男に見てしまう。

……俺はまだ、祓いきれていない。
秩序の名を掲げても、心の底ではぐらついている。
ノインを見ていると、それが嫌でも突きつけられる。
似ていて、怖い。
似ているから、問われている。
その両方に縛られている限り、俺は秩序の神の顔なんてできやしねえんだろうな。

2025年9月23日