2026-01

影の祈り_語られない記録

被害者の会 2

三回目になると、セディはもう迷わなかった。扉を開けると、誰かが軽く手を挙げる。「どうも」「どうも」それだけで通じるのが、この会のいいところだ。椅子に腰を下ろすと、向かいの女が言った。「最近どう?」「……思い出す頻度は減った」「進歩ね」誰かが...
外伝

外伝6 沈まない熱

脛を撫でる低い草を踏み分けながら、今更になって後悔する。近くだから自分が行くと言ったこと、一人でも大丈夫だと言ったこと。使いの一つも満足にできないと思われるのは自尊心が許せなかった。それでもこうして右も左も分からなくなってくると、素直に付い...
かつての光_交わる前に紡いだ記憶

名(祈)

名を問われたとき、沈黙があった。それは迷いではなく、祈りが形を取るまでの時間だった。「アスレイド」口にした瞬間、空気が変わった。誰かが異を唱えるより先に、祈りが通った。それで十分だった。奉神官は何も問わず、書記は名を記した。中枢に刻まれる名...
影の祈り_語られない記録

尾羽

「鳥の尾みたいだね」ある日、アスレイドが言った言葉だ。白と黒が混ざった髪を、ノインは後髪だけ伸ばし続けていた。特に理由はなかった。ただ、背中に近い辺りが上手く自分で切れなくて。結局、肩甲骨の間の部分だけ伸びっぱなしだった。からかってるように...